ロールモデル3:熊谷 章子 先生(歯学部)岩手医科大学-研究者支援室設置準備委員会
category : 岩手医科大学の教職員・医療従事者ロールモデル 2019.8.20
<熊谷 章子(くまがい あきこ):歯学部 法科学講座法歯学・災害口腔医学分野 准教授>
プロフィール
・出身地 千葉県富津市
・1988年 千葉県立木更津高校 卒業
・1994年 岩手医科大学歯学部 卒業 歯科医師国家試験 合格
・1994年 慶應義塾大学病院 歯科口腔外科学教室 入局
・2003年 岩手医科大学大学院医学研究科(法医学専攻)入学
・2007年 同上 修了
・2007年 岩手医科大学歯学部口腔外科学第二講座(現 口腔顎顔面再建学講座口腔外科学分野)入局
・2016年 ルーヴァンカトリック大学 法歯学マスタープログラム 修了
・2017年 岩手医科大学法科学講座法歯学・災害口腔医学分野 准教授
専門医・認定医
・日本口腔外科学会専門医
・日本抗加齢医学会専門医
・日本がん治療認定医(歯科口腔外科)
・日本口腔顔面痛学会認定医
研究活動
・骨や歯を利用した身元不明死体の歯科的年齢推定
・咬傷のデジタル解析
・日本の災害犠牲者個人識別の国際標準化
研究業績
1. Kumagai A, Tsunoda K. Protein Carbonylation as the Pathogenesis of Oral Hyperkeratosis: A Pilot Study. Dentistry (2019) 9: 4.
2. Kumagai A, Takahashi N, Palacio L, Giampieri A, Ferante L, Cameriere R. Accuracy of the third molar index cut-off value for estimating 18 years of age: Validation in a Japanese samples. Legal Medicine (2019) 38: 5-9. [PubMed]
3. Kumagai A, Iijima S, Nomiya T, Furuya I, Ohashi Y, Tsunoda K, Onodera K, Tsunoda N, Komatsu Y, Hirano T. A pilot study of the clinical evidence for the methodology for prevention of oral mucositis during cancer chemotherapy by measuring salivary excretion of 5-fluorouracil. Br Dent J (2018) 23: 17041. [PubMed]
4. Kumagai A, Willems G, Franco A, Thevissen P. Age estimation combining radiographic information of two dental and four skeletal predictors in children and subadults. Int J Leg Med (2018) 132: 1769-1777. [PubMed]
5. Kumagai A, Mikami T, Takeda Y, Sugiyama Y. Multiple distant organ metastases from squamous cell carcinoma of the lower gingiva that followed a rapid course: an autopsy case report. Oral Sci Int (2018) 15: 68-72.
6. Kumagai A, Fujimura A, Dewa K. Dental identification using dental cone-beam computed tomography. Dentistry (2015) 5: 9.
7. Kumagai A, Fujita Y, Endo S, Itai K. Concentrations of trace element in human dentin by sex and age. Forensic Sci Int (2012) 129: 29-32. [PubMed]
8. Kumagai A, Matsuo S, Hoshi H, Sato H, Takeda Y, Sugiyama Y. Oral lichenoid drug reaction with autoantibodies in peripheral blood: Case report. Oral sci Int (2011) 8: 29-33.
9. Kumagai A, Nakayashiki T, Aoki Y. Analysis of age-related carbonylation of human vitreous humor proteins as a tool for forensic diagnosis. Legal Medicine (2007) 9: 175-80. [PubMed]
書籍(共著)
1. 災害歯科医学 第1版:槻木恵一、中久木康一 編、医歯薬出版株式会社 (2018) 88-94.
2. 3.11 Identity 身元確認作業に従事した歯科医師の声を未来へ Japanese Unidentified and Missing Persons Response Team ブックウェイ (2016) 64-67.
3. デンタル小町は語る 女性歯科医師29人の診療と横顔 日本歯科新聞社 (2015) 158-163.
研究費
1. 熊谷章子(代表)公益財団法人 韓昌祐・哲文化財団 2019-2020:韓国National Forensic Science法歯学部門長に学ぶ災害犠牲者身元確認作業方法標準化への推進活動
2. 熊谷章子(代表)日本学術振興会「基盤研究C」2012-2015:口腔角化病変発症メカニズムでのカルボニル化タンパクの意義とレドックス制御機構の解明
受賞歴
1. Iwate Medical University, School of Dentistry, Clinical Research Award, Best Researcher of the year (2012年)
所属学会
・日本口腔外科学会、日本口腔腫瘍学会、日本口腔顔面痛学会、日本抗加齢医学会、日本法医学会、日本法歯科医学会、International Association of Coroners & Medical Examiners、American Society of Forensic Odontology、他
現在に至るまでの経緯
ひとりっ子の私は岩手医科大学歯学部を卒業後、実家の歯科医院を継ぐことを意識して、口腔外科や矯正歯科を含めた歯科診療全般の習得が期待できる東京の大学病院を研修先として選び、沢山の技術を学びました。しかし盛岡で歯科医院を開業する人と結婚し、卒業7年目にして盛岡に戻ってきてしまいました。実家では今も父が個人の歯科診療所で、ひとりで診療を続けています。
一旦大学病院を退職して離れてしまうと、違う大学病院に再び就職することは困難でした。まだまだ大学で研究や臨床を続けたいと思っていた私は、高校の頃に読んだ本を思い出し、兼ねてから興味を持っていた法医学の勉強をしたいと思って、岩手医科大学大学院医学研究科に法医学専攻で入学する形で大学との関わりを維持しました。4年後晴れて修了しましたが、当時はまだ歯科医師として法医学で給料をいただける枠はなく、再び同大学歯学部の口腔外科で臨床に従事することとなりました。一見遠回りをしているようですが、私にとって大学病院勤務、大学院生活、そして再び大学病院勤務の時期はとても充実したものでした。
法医学の大学院を卒業して4年目、口腔外科に従事していた時に起こったのが東日本大震災です。岩手県で法医・歯科学を勉強した経験のある者として、多数犠牲者の歯科的個人識別に従事する日々が続きましたが、日本の災害対応、法歯学に関するあらゆる問題に直面し、あまりにも海外での災害対応とかけ離れたことをしていることに気づかされました。「このままではいけない」と感じるようになり、震災後は海外の法歯学に関するセミナーや学会、さらにはベルギーの大学に留学して法歯学マスタープログラムを修了しました。あの震災後、日本でも災害犠牲者の身元確認活動における歯科的知識の有用性と教育の重要性が意識され始め、複数の歯科大学に法歯学講座が新設されるようになりました。そしてとうとう2017年4月に岩手医科大学にも開設された法歯学・災害口腔医学分野の准教授に就任させていただけることとなったのです。
現在の仕事は、大学で行われる法医解剖事例の歯科的個人識別、所轄警察署での身元不明死体の歯科所見採取、各機関が開催する合同災害訓練への参加、研究課題の遂行と学会発表等での成果の公開、そして最も時間を費やしているのが学生教育となります。すでに大学は卒業しているが、在学中に学ぶ機会がなく、今現在法歯学・災害口腔医学に興味を持たれているという全国の歯科医師の方々にも適切で正しい歯科的個人識別を周知していただけるよう、様々なワークショップを開催するように努力しています。
学生さんへのメッセージ
常に前を向くことです。時々過去を振り返ってもかまいませんが、そればかり続けていると前に進めません。もし今が充実しているのであれば、それが維持できるように突き進む、もし現状に満足していないのであれば、その場で立ち止まらず、躊躇せずに違うベクトルを探す努力をする、未来には新しい自分や環境が待っています。
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